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2019年6月28日

[アヤメ、カキツバタ、ハナショウブ]いずれアヤメかカキツバタ…そしてハナショウブ?|アヤメ科アヤメ属|エバーグリーン

ハナショウブ

ハナショウブ

アヤメの仲間(アヤメ科アヤメ属)には非常に多くの種類があります。ハナショウブをはじめ、アヤメカキツバタシャガダッチアイリスなど園芸でも広く親しまれています。

「いずれアヤメかカキツバタ」という言葉があります。「どちらが優れているか決められない」「どちらの花も似ていて区別できない」という意味です。確かにアヤメの仲間はどれも花の見た目が似ています。特にアヤメ、カキツバタ、ハナショウブの三種は公園など身近な場所で見かけることも多く、花が咲く時期も近くて見分けがつきにくいです。

※ 以降ここでは、アヤメ、カキツバタ、ハナショウブを「三種」と記載することとします。

 

今回はそれぞれの特徴を知ってもらい、区別する際のヒントになればと思います。
すべてひっくるめて『アヤメの仲間』でもいいかもしれませんが、ひとつずつ名前を覚えることでその植物の特徴や由来もわかってくるものです。まずはこの三種がそれぞれどんな植物なのかざっと見ていきましょう。

 

アヤメ

アヤメ

アヤメ

三種のなかではいちばん小さな花を咲かせます(栽培品はやや大きめ)。花色はが基本で、ほかに紅紫などがあります。花びらのつけ根に黄色と紫の網目模様があります。この網目模様=「文(綾)目」がアヤメの語源になったといわれています。日当たりの良い乾燥地や水はけのよい傾斜地などで育ちます。

 

カキツバタ

カキツバタ

カキツバタ

万葉集にも登場する古くから親しまれている花です。尾形光琳の『燕子花図-かきつばたず-』をはじめ、多くの画家や文人を魅了した花でもあります。花の大きさは三種のなかでは中くらいです。花色は紅紫などがあります。江戸時代から品種改良が進みましたが、ハナショウブほど品種は多くありません。花びらの真ん中に白い筋が入ります。
とても水が好きな植物で、池や湿地など水が豊富な場所で育ちます。鉢植えで育てる際も、水が貯められる容器を用いるのが一般的です。

 

ハナショウブ

ハナショウブ

ハナショウブ

野生のノハナショウブを元に改良された園芸植物です。改良が盛んに行われるようになったのは江戸時代で、明治、大正、昭和と改良が続き、現在のハナショウブに至ります。とにかくたくさんの品種があり多彩です。品種改良がおこなわれた土地の違いなどから、江戸系、肥後系、伊勢系、長井古種などの品種群に分けられます。

花色は紅紫青紫などがあり、花びらに縁取りや細かい斑点の入るものがあります。三種のなかではもっとも大輪の花を咲かせます(ノハナショウブは小輪)。やや乾燥をきらい、湿り気のある土壌を好みます。端午の節句でしょうぶ湯に用いるショウブはショウブ科の植物で、ハナショウブとは全く異なる植物です。

 

以上が三種の説明です。それでは違いをまとめてみましょう。

 

育つ場所

アヤメの仲間と言えば池など水のある場所で花を咲かせているイメージがあります。確かにカキツバタは湿地のような水に浸かる場所で育ちますが、アヤメは逆に水はけのよい乾燥地でよく育ちます。ハナショウブはカキツバタほど水を好みませんが、アヤメほど乾燥に強くありません。

図1 生育環境

図1 生育環境

 

花しょうぶ園などでは、ハナショウブが水の貯まった池のなかで咲いています。それを見ると水に浸かる場所で育つと思われがちですが、年中水に浸かっていると根が傷みやすく、育っても数年で弱ってくると思われます。花どきだけ池に水を張っているのでしょう。

 

花や葉っぱの特徴

アヤメは花びらのつけ根に網目模様、カキツバタは白い筋が入ります。葉の幅はアヤメが狭く、カキツバタは広いです。

図2 花びらで区別するアヤメとカキツバタ

図2 花びらで区別するアヤメとカキツバタ

 

ハナショウブは園芸品種で数も多いので、花や葉っぱの客観的な特徴は筆者にはよくわかりません。たとえば原種のノハナショウブも含めて花びらに黄色い筋が入るものが多いですが、例外もあるような気がします。

花びらに黄色い筋が入ることが多いハナショウブ

花びらに黄色い筋が入ることが多いハナショウブ

 

ハナショウブは「葉っぱの真ん中に太い葉脈が浮き出る」という特徴もあります。これはほかの二種には見られないので、客観的な特徴といえそうです。しかし、実際に観察すると葉脈が今ひとつはっきりしない株もあります。

葉っぱの真ん中に葉脈の浮き出たハナショウブの葉っぱ

葉っぱの真ん中に葉脈の浮き出たハナショウブの葉っぱ

 

「花びらの黄色い筋」「葉の葉脈」これらがハナショウブの客観的な特徴といえるかはあいまいです。ただ、当てはまるものが多いうえにわかりやすいので、憶えておいても損はないです。

 

開花時期

筆者の住んでいる京都では、ゴールデンウィーク頃にアヤメが咲き(5月上旬)、続いてカキツバタ(5月中旬から下旬)、入梅の頃にハナショウブが咲く(5月下旬から6月)といった感じです。

 

さいごに

三種の違いを表1にまとめました。「百聞は一見にしかず」で、実際に観察するとかなり細かなところまで違いがわかると思います。

表1 三種の違い

アヤメ カキツバタ ハナショウブ
生育適地 乾燥地 湿地 適湿地
小輪

花びらに網目模様

中輪

花びらに白筋

大輪

花びらに黄色い筋の入るものが多い

葉っぱ 幅が狭い

葉脈ははっきりしない

幅が広い

葉脈は細い

幅は中くらい

葉脈が太く、くっきり浮き出ることが多い

開花期 5月上旬から中旬 5月中旬から下旬 5月下旬から6月

 

ここで紹介したのはあくまで三種の違いで、ほかの仲間(アヤメ科アヤメ属の別種)も含めると区別はさらにややこしくなります。アヤメの仲間は非常に多彩ですので、興味のある方は調べてみてください。おもしろいですよ。

 
ヤサシイエンゲイ 小林昭二)

 


 

図1 生育環境