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2020年11月2日

[ヘクソカズラ]ヘクソカズラの観察|アカネ科ヘクソカズラ属|エバーグリーン

ヘクソカズラ

ヘクソカズラ

 

見たことがなくても一度名前を聞いたら忘れられない植物です。「ヘクソ」は「屁糞」でカズラは「葛」、つる性植物のことです。

葉や茎を傷つけたとき「悪臭」を放つのでこの名前が付けられました。たしかに葉をちぎるとむわっと臭(にお)いが漂いますが、さほど強烈ではありません。個体差があるのか季節によって違うのか、臭いについては観察の余地がありそうです。大量にちぎったりすりつぶしたりすると臭いは強くなるかもしれません。

ヘクソカズラは庭や公園、空き地や藪など、身近な場所でごく当たり前に見かけるザッソウです。見られる季節は主に初夏から秋で、細い茎をフェンスや他の植物にくるくる巻き付け、わさわさと茂ります。見た目は名前ほど強烈ではありません。

フェンスに絡まるヘクソカズラ

フェンスに絡まるヘクソカズラ

 

拙庭にもよく生えてきます。フェンスをはじめ、庭木やほかの草花にも絡まります。最初の頃は見つけ次第つるを引きちぎっていましたが、根っこが残っている限りいくらでも生えてくるので途中で根負けします。茎は細い割にしなやかで丈夫なので、引きちぎるにもなかなか力がいります。

じゃあ、根こそぎ引っこ抜いてしまえばいいじゃないか、となりますが絡まり合った茎をたどって根元に到着するのもかなり手間です。株元の茎もひょろりと細く、周りに下草が茂った状態では本当に目立たず見つけにくいです。茎葉は冬に枯れてしまいますが根っこは生きており、翌春に再び芽生えます。

「根絶してやる」と思うほどの憎さはないので、現在では放置状態です。たしかによく茂りますが、拙庭ではほかの植物の邪魔をするほど暴力的には増えません。

ヘクソカズラの花

ヘクソカズラの花

 

以上のように、名前も含めて褒めるところがないザッソウですが、花と果実は美しいです。花はおもに夏に咲きます。茎の先端に近い葉の付け根から花茎を伸ばし、先端の開いた筒状の花をたくさん咲かせます。花色は全体が白で中心部分に赤紫色の目が入ります。

サオトメバナ、ヤイトバナなどの別名は花姿に由来します。サオトメバナは花を早乙女(田植えをする若い女性)のかぶる笠に見立てたものです。ヤイトはお灸のことで、正面から見た花の様子が、お灸を据えた跡に見えるからです(筆者には目玉のおやじのように見えます)。

未熟な果実

未熟な果実

 

花後にできる小さな球状の果実は光沢があり秋に熟して琥珀色に変わります。色づいた果実は工芸品のように美しいです。この頃には茎葉も茶色く枯れはじめて、まさにその姿は「枯れた魅力」。しかし、この果実(タネ)がばらまかれて増えることを考えると、何とも複雑な気持ちになるのでした。

ヘクソカズラの実(エバーグリーン植物図鑑)

ヘクソカズラの実(エバーグリーン植物図鑑)

 

ヤサシイエンゲイ 小林昭二)

 


 

ヘクソカズラの花