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2016年6月30日

インタビュー:「草木花 × オンリーワン」〜園芸家 横山直樹さん(原種シクラメン編)

お花野菜エディブルフラワー編に続き登場するのは、園芸家・横山直樹さん。原種シクラメンダイヤモンドリリー(ネリネ)クリスマスローズなどを、植物が成長する時間に併せて育成されています。清瀬市にある横山園芸に伺い、横山さんが手塩にかけて育てている花たちを見せていただきながら、花への想い、園芸家としての活動について伺いました。

 

園芸家としての原点は原種シクラメンとの出合い

 

— 横山さんが園芸家をめざそうと思った経緯を教えてください。

園芸農家で育ちましたから、いつも花がそばにありました。思春期の頃は「男が花なんて」と思ったこともありましたが、将来を考えたとき、やっぱり花の勉強をしてみたいと思ったんです。そして、専門学校卒業後、2年間イギリスに研修に行って、植物の勉強をしてきました。このときに、原種シクラメンを始めとするさまざまな植物に出合えたことは大きな収穫でした。花を介して話をすることで、英語も話せるようになりました。イギリスでの2年間は、僕の園芸家としての出発点といってもいいかもしれません。

花を介することで、イギリス研修で英語も話せるようになったとのこと。

花を介することで、イギリス研修で英語も話せるようになったとのこと。

 

— イギリスでの原種シクラメンとの出合いが、園芸家としての横山さんに大きく影響したということですね。

横山園芸としては、父の代、40年くらい前から原種シクラメンを手がけてはいたんです。でも、その当時は大きなシクラメンばかりがもてはやされて、売れないシクラメンが棚下にいっぱい転がっているような状態でしたよ(笑)。クリスマスローズの育種、生産を勉強することが目的でイギリスに行きましたが、そこで原種シクラメンが、40年も50年も長生きすることを知りました。それまでシクラメンはほとんど1年で枯れてしまい、どちらかというと使い捨てにされる植物だと思っていましたから、1つの球根で育ったシクラメンがこんなに長く生きているということにとても驚きました。本格的に園芸がおもしろいと思い始めたのもこのときからです。

横山さんが魅せられた原種シクラメン

横山さんが魅せられた原種シクラメン

 

原種シクラメンの魅力

 

— 原種シクラメンといわゆる普通のシクラメンはどのように違うのでしょうか?

花屋さんで売られているいわゆるシクラメンは、改良を重ねて育てられているのに対して、原種シクラメンは、品種改良されていない、限りなく野生に近い状態です。野草のかわいらしさ、清楚さ、丈夫さを併せ持っています。また、店頭で売られている1年程度の寿命のシクラメンに対して、40年も長生きする原種シクラメンがあるんです。鉢だけでなく、庭の地面で育つ品種もあります。派手さはないので主役にはなれないけれど、名脇役だなぁと思っています。

横山直樹さん

横山直樹さん

 

— 原種シクラメンは、何種類くらいあるのですか?

原種そのものは23種ですが、花や葉っぱの色や形で区分けしていくと100種類くらいになります。店頭で売られている大きなシクラメンは、23種の内の1種が品種改良されたものなんです。22種は原種の趣を残したもので、野に生えているシクラメンに限りなく近いといわれています。

ここには、23種の内、戦争が続くソマリアに自生している原種シクラメン以外、22種の原種シクラメンの親株があるんですよ。

原種シクラメンと横山直樹さん

原種シクラメンと横山直樹さん

 

— よく見ると、一つひとつ違っているんですね。

そうでしょ?(笑) 葉っぱの模様がツリーだったり、ハートだったり、シルバーがかった色だったり、かわいいでしょ!? このシクラメンは、いい香りがしますよ。最初の頃は、自分の趣味で育てているようなところがあったんですけれど、僕が熱く(笑)、葉っぱのことを話しているうちに、興味を持って「扱いたい」と言ってくれる園芸店が出てきて、今度は園芸店の人がお客さんに説明してくれるようになって……。売る人が好きになってくれて、その結果、買う人も好きになってくれています。

可愛い葉をした原種シクラメン

可愛い葉をした原種シクラメン

ぜひ、細部にこだわった楽しみを見つけてほしいです。花の色や葉っぱの模様、香り……、楽しみ方も、アプローチも人それぞれでいいと思うんです。スロベニアのスキー場だったり、マッターホルンの麓の林の中だったり、ギリシアの岩場だったり、咲いている場所に想いを馳せるのも楽しいですよ。

いろんな種類の原種シクラメン

いろんな種類の原種シクラメン

 

横山ブランドの確立をめざす

 

— 横山さんは、どんなことにこだわって原種シクラメンを育てているのでしょう。

買ってくれた人のところに行っても長生きして欲しいですから、できるだけ少ない肥料で、最低限の消毒で、ゆっくり育てるようにしています。季節を飛び越えることなく、手を入れて早く咲かせることなく、植物が成長する時間にじっくり付き合うんです。もちろん適度にコントロールすることはありますが、決して人間本位になりすぎてはいけないと思っています。その結果として、「横山の育てた原種シクラメンは、買った後に良くなっていくね」と言ってもらえたらうれしいですねぇ。

何年もかけて大きく育ち花を咲かせる原種シクラメン

何年もかけて大きく育ち花を咲かせる原種シクラメン

原種シクラメンは、原種シクラメンは市場に出るまでに早くて2、3年かかりますし、ダイヤモンドリリーは種子から6、7年、分球でも4、5年かかりますからね。確かに手間も時間もかかりますから、経営のことだけを考えていたら育てられないですけれど、出合っちゃいましたからね(笑)。お陰様で、ようやくダイヤモンドリリー、原種シクラメンといえば「横山ブランド」といっていただけるようになってきました。日本でも世界でもこんなに手間のかかる植物ばかり育てている園芸農家は、横山園芸以外にはあまり多くは無いのでは?どちらかというと趣味の領域ですよね(苦笑)。

原種シクラメンいろいろ

原種シクラメンいろいろ

 

年月を重ねて花開くダイヤモンドリリーとクリスマスローズ

 

— 横山ブランドのダイヤモンドリリーについて教えてください。

この温室には2万5,000ポット、球根数にするとその1.5倍のダイヤモンドリリーがあります。植え替えを繰り返して、4年ほどで切り花として出荷します。種子を撒いてからだと、花が咲くまでに6、7年はかかります。地面に植えると花が小さくなったり、咲かずに腐ったりすることもあるので、鉢で管理することになります。つまり、鉢物の技術と切り花の技術の両方を併せ持たなければ育てられません。時間、技術、収入など、いろいろな要素が絡み合っているので、生産リズムを作るのが非常に難しいんです。

2万5,000ポットものダイヤモンドリリー

2万5,000ポットものダイヤモンドリリー

 

ダイヤモンドリリーも咲くまでに年月がかかります。

ダイヤモンドリリーも咲くまでに年月がかかります。

しかし、最近は、季節や花の個性を大切にする花屋さんも増えて来て、欲しいと言ってくれるようになりました。ダイヤモンドリリーは、花びらがキラキラしているので、ウェディングブーケに使われることも多いですよ。出荷時期の10、11月は、まるで戦場のような忙しさになります。

 

オリンピックのビクトリーブーケをイメージした作品(山口県 アトリエロト 平光繁仁 作)

オリンピックのビクトリーブーケをイメージした作品(山口県 アトリエロト 平光繁仁 作)

ダイヤモンドリリー(写真提供:横山直樹さん)

ダイヤモンドリリー(写真提供:横山直樹さん)

ダイヤモンドリリー(写真提供:横山直樹さん)

ダイヤモンドリリー(写真提供:横山直樹さん)

ダイヤモンドリリー(写真提供:横山直樹さん)

ダイヤモンドリリー(写真提供:横山直樹さん)

ダイヤモンドリリー(写真提供:横山直樹さん)

ダイヤモンドリリー(写真提供:横山直樹さん)

ダイヤモンドリリー(写真提供:横山直樹さん)

ダイヤモンドリリー(写真提供:横山直樹さん)

 

— 我が家の庭のクリスマスローズはまだ咲いています……

クリスマスローズといわれていても、花の季節はだいたい2、3月頃ですから、咲いているように見えても、咲き終わっていると思いますよ。今の時期に花芽を摘んでおいた方が、次の季節にいい花が咲くはずです。ここにあるクリスマスローズに袋を被せてあるのは、種子を取るためです。もし増やしたいと考えているなら、秋に種子を撒いて、1、2月に発芽したら、植え替えるといいですよ。そこから花が咲くようになるまで、約2年かかります。日の当たらないような場所でも育ちますし、比較的病気になりにくいといわれていますから、園芸の初心者でも育てやすいですよ。

クリスマスローズ。種を取るために袋を被せる。

クリスマスローズ。種子を取るために袋を被せる。

 

草木花好きなエバーグリーンユーザーへのメッセージ

 

— エバーグリーンを利用しているかたにメッセージをお願いします。

一つの植物に夢中になるのはいいことだと思いますが、できるなら自分ひとりの楽しみで終わらせないで、周りの人にも共有したり、広めたりして欲しいなと思います。いろいろな種類の植物を育てるなかで、本当に自分の好きな植物に出合えると思うんです。育てる、見る、食べるなど、さまざまな角度から植物に関わって、いろいろな人と話せたらおもしろいですよね。何か一つ専門性を持っていても、他にも興味を持てれば、そこから学べることは大きいはずです。私が関わっている園芸同友会には、園芸家、造園家、石屋さんなど、植物をキーにしてたくさんの人が集まってきます。

植物のスピードって、人間のスピードに合っていると思うんです。芽が出て、花が咲いて、葉っぱが枯れて、四季を感じることができるでしょ。植物に合わせて、ときには少しスローダウンしてもいいんじゃないかなと感じています。

 

横山ブランドの理解者を増やすために

 

— どんな園芸家をめざされていかれますか?

僕は生産者ですが、できる限り自分自身も買う・楽しむ側でもいたいんです。よく消費者といいますが、植物は消費するだけのものではないと信じています。形はなくなっても思い出は残る。僕自身が常に、楽しんだり、共有したりする、お客さまと同じ立場でいたいんです。どんな植物や花にも、どこから来てどういう場所に生えていてというような背景やストーリーは必ずあるはずです。植物のことをよく知らない人も、単純に花がきれいだから好きという人だって、そのストリーを知った上でもらったり、育てたら、喜びが増えて、きっとおもしろいだろうと思うんですよ。そういうことを伝えながら、理解者を増やしていくことが、結果として横山ブランドに繋がっていくと信じています。

植物は決して人を傷つけないし、国、性別、年齢などを超えて、色々な人をつなげて、笑顔にしているはずです。そこが植物の価値であり、嗜好品ではありますが、僕は必需品だと思っています。そんな想いを元に、植物を育てる楽しみ、触れる喜びを広めていけたらなと思っています。

 

■横山直樹(よこやまなおき)さんプロフィール
横山園芸・代表社員。1978年生まれ。全国各地で講演会を行うほか、NHK「趣味の園芸」講師、英国シクラメン協会日本支部代表、園芸同友会会長などの活動を通じて、植物の楽しさや魅力を伝える。趣味は全身で植物とたわむれること。登山や植物散策、いけばな、あらゆる植物の栽培など、植物に関わるすべてのことから感性を磨く。植物で一人でも多くの人を笑顔にすることがライフワーク。

 


オリンピックのビクトリーブーケをイメージした作品(山口県 アトリエロト 平光繁仁 作)