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2022年6月6日

[ハナノキ]ハナノキからタネの木に|ムクロジ科カエデ属|エバーグリーン

サクラはとうに散り、あっという間に梅雨が近づいてきています。植物の花が咲く時期というのは気温や日照によって調節され、その植物が生きる地域によって開花期が変わるため、日本では「桜前線」という世界でも珍しいニュースが毎日のように報道されるわけですが、水戸という地に住むようになって多くの植物の開花期が東京よりも約10日遅いことを体感し、あらためて植物の生理の細やかさに驚かされています。今回はサクラ以外にもう一つ、春から観察してきて心動かされた植物「ハナノキ」を紹介しましょう。

サクラよりも赤いためちょっと変わったお花見が楽しめる

サクラよりも赤いためちょっと変わったお花見が楽しめる

 

ハナノキは日本の固有種でカエデの仲間の落葉高木です。長野県・岐阜県・愛知県の主に木曽川流域の山間の湿地に自生しており、自生地では国の天然記念物に指定されたり県の木になっていたりします。環境省のレッドリストでは絶滅危惧植物に指定されていますが、最近では公園や植物園、街路樹としても植栽されていることがあるために目にする機会があります。

房状の花の形が面白い

房状の花の形が面白い

 

ハナノキの名の由来は、春になると雌雄異株の木の枝先に赤紫色の花が咲く様子からだといわれています。遠目に見ると木全体が赤紫に覆われて、新緑のなかでその場所だけポッと燃えているように見えるほど目立ちます。雄株は上向きに、雌株は下向きに、花は1輪ずつだと小さいのですが蕊が繊細に集まりぎゅうぎゅうと身を寄せ合っているように咲く姿は集合の美といえるでしょう。

花後も見どころがたくさんあるのがうれしい点で、まずは雌株の枝先にカエデ特有のプロペラ状の種子が房になって枝垂れ、熟した種子が散布される様子は観察しがいがあります。ハナノキからタネノキに、さらに手を広げたような形の葉は秋になると紅葉または黄葉してハノキになります。

約1ヶ月後の種子のすがた

約1ヶ月後の種子のすがた

1年のうちに3回も見どころがあるなんて、なんてサービス精神豊かな木なのか、これはしっかり観察をしなくては! ぜひお住いの近くにあるハナノキを探して、じっくり1年間の移ろいをお楽しみください。

 

水戸市植物公園 宮内元子)


約1ヶ月後の種子のすがた