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2022年12月15日

「草木花 × 牧野植物園」2023年朝ドラのモデル「牧野富太郎」の故郷の山に広がる大きな植物園(前編)|エバーグリーン

NHKの朝ドラ制作発表時から、植物好きの間で大きな話題を呼んでいる高知県立牧野植物園。2023年度 前期の連続テレビ小説「らんまん」のモデルとなるのは、日本における植物分類学の父と称される牧野富太郎氏です。牧野氏が89歳の頃「植物園やったら五台山がええ」と言ったことをうけて作られた「高知県立牧野植物園」に足を運び、植物園を維持管理するみなさんにお話を伺いました。牧野植物園と牧野博士の魅力について3回に分けてご紹介します。

 

牧野富太郎ってどんな人? 幕末、名字帯刀を許された商家の一人息子として生まれる

高知県佐川町にある富太郎の生家は、江戸時代、武士の特権である名字帯刀が許された特別な造り酒屋。その一人息子として生まれた富太郎は3歳で父親を、5歳で母親を、6歳で祖父を次々と亡くし、祖母の手で大切に育てられました。

牧野富太郎生誕の地(佐川町)

牧野富太郎生誕の地(佐川町)

 

一人っ子で、ともすれば寂しい幼少期、裏山の小さな植物たちを友とし、のびのびと情緒豊かに育ちました。なにかに影響を受けたわけでも親の遺伝でもなく、自然に草木が好きだったという富太郎。晩年を東京で過ごした富太郎にとって、思い出深いふるさとの花として思いを馳せたのが「バイカオウレン」でした。森林の、落ち葉が積もる湿った場所に群生し、株元からまっすぐに伸びた高さ3~10cmの花茎の先に、梅に似た小さな白い花を咲かせます。開花期は12〜2月。牧野植物園では、回廊エリアで群生しています。

回廊付近のバイカオウレン。10月末ごろのため葉のみ。

回廊付近のバイカオウレン。10月末ごろのため葉のみ。

金峰山(6月中旬)

バイカオウレン(エバーグリーンポスト「春を告げる可憐な花」より)

 


<豆知識> 富太郎の生家「岸屋」と「司牡丹」

一人息子の富太郎ですが、実家の商売には関心がなく、上京した後に人手に譲ったようです。当時、佐川には岸屋を含め4軒ほど造り酒屋があり、それらが合併して司牡丹になっているようです。「司牡丹酒造」で近年造られたのが牧野博士の名を冠した「マキノジン」。富太郎が妻の名前から命名した「スエコザサ」をはじめとした12種類の植物を漬け込んだ焼酎を蒸留し、貯蔵熟成したジン(蒸留酒)です。

園内の回廊に植えられているスエコザサ

園内の回廊に植えられているスエコザサ


 

授業がつまらなくて小学校を2年で退学するも翌年、教員として雇われる天才児

富太郎が生まれた時代の高知県は、坂本龍馬が活躍する歴史の表舞台。当時佐川町は教育も盛んでした。10歳で寺子屋で習字を学び、11歳には儒学者・伊藤蘭林に漢学を学び、名教館では西洋の学問を学び、英語学校で英語も学んでいます。翌年佐川に開校した小学校に入学すると、飛び級でどんどん上の学年にいくも、授業の内容に飽き足らず2年で退学してしまいます。

小学校を退学して自然の教場である野山に戻ると、植物を採集しては本草書で照合し、独学で植物を研究します。自主退学したにもかかわらず、その1年後の15歳のとき、小学校から臨時教員になるように要請を受けています。それほど富太郎の学力・知識量はずば抜けていたようです。

ギンリョウソウ植物図 牧野富太郎 1880年

ギンリョウソウ植物図 牧野富太郎 1880年

 

電車も発達していない明治、高知から東京へ

富太郎が初めて上京したのは明治14年、19歳のとき。日本に初めて電車が走ったのが明治5年で、この頃は全国に電車は走っていません。上京の目的は植物を観察するための顕微鏡や植物に関する書籍を購入すること。佐川の町から高知の港まで歩き(推定・徒歩8時間の道のり)、その後蒸気船で神戸へ。神戸から陸蒸気で京都に出た後は歩いて三重県の四日市へまで行ったといいます。どのような経路を辿ったのか定かではありませんが、その距離は、100キロを超えているはず(推定・徒歩24時間)です。

『箱根植物調査記録』1886年

『箱根植物調査記録』1886年

 

「その頃、東京へ旅行することは、まるで海外へでも出かけるようなものだった」と晩年、自著に書かれているとおり、大掛かりな旅でした。植物を知るためにはお金も時間も惜しまない富太郎らしさが現れる行動です。この旅で採集した植物のひとつにイブキスミレがあります。

その後、2度目の上京で東京大学理学部植物学教室を訪ね、教授の矢田部良吉から学生でもないのに教室への出入りが許された富太郎は、多くの同志と出会い植物研究に没頭していきます。そこで注目を浴びたのは、植物に対する深い知識と描写力。2回目は、その描写力に焦点を当ててご紹介していきます。

展示館内のご案内をいただいた橋本主幹と解説をいただいた藤川課長

展示館内のご案内をいただいた橋本主幹と解説をいただいた藤川課長

 

なお、博士の生い立ちについては、牧野植物園の「牧野富太郎記念館 展示館」で、貴重な資料や写真とともに詳しく紹介されています。もっと詳しく知りたい方は、ぜひこちらに足を運んでみてください。

 

前編のフォトアルバムを見る

 


 

展示館内のご案内をいただいた橋本主幹と解説をいただいた藤川課長