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2023年7月13日

[クルマユリ]真夏の強い日差しに映えるクルマユリ|ユリ科ユリ属|エバーグリーン

今回は、亜高山帯の草原などに生える「クルマユリ」を紹介します。ユリ科ユリ属の多年草で、四国の剣山と本州(近畿地方)から北海道に分布します。

八ヶ岳南部:標高約2,300m(7月下旬)

八ヶ岳南部:標高約2,300m(7月下旬)

八ヶ岳南部:標高約2,400m(8月上旬)

八ヶ岳南部:標高約2,400m(8月上旬)

 

夏山には欠かせない花の一つです。茎の高さは約1mになるので、草原の上に出た鮮やかな赤橙色の花が目立ちます。山梨県内の標高約1,500m以上の山ではどこでも見ることができますが、ついついカメラのシャッターを押してしまい写真が増えます。

クルマユリの生息域は亜高山帯とのことですが、筆者が最初に出合ったのは50年近く前に職場の仲間に連れられていった白山でした。とにかく目立つ花でした。その後、本格的に山歩きをするようになり、北アルプスや中央アルプスおよび南アルプスの高山域などでも見る機会が増えました。私が見た最も高所は、北岳の標高約2,900mのお花畑です。

八ヶ岳南部:標高約2,300m(8月上旬)

八ヶ岳南部:標高約2,300m(8月上旬)

 

一方、いつも森林セラピーで利用している西沢渓谷の比較的低いところでも生息しています。標高は約1,000m前後ですが、渓流沿いの岩場の斜面に数か所ある小さな叢(くさむら)で花を咲かせます。冬期は日差しがないので岩一面は滲み出た山水が氷結して覆い尽くされる場所ですが、毎年7月中旬〜8月中旬には暖かい日差しをいっぱいに受けて咲き誇ります。

数年前に、花に詳しいお客様から「山の草原に生えるクルマユリがどうしてこのような岩道に生えるのですか? 不思議ですね!」と言われたことから探究心に火が付きました。それまでは、そこに咲くのが当たり前と思っていたからです。

地元の山に詳しい知人とこの場所の上部に当たる尾根周辺を調べた結果、標高約1,600mの尾根沿いにクルマユリの生息する草原がありました。ここの種が渓流沿いに運ばれ、たまたま土のある日当たりの良い場所で生き延びることができたものと筆者は考えています。ゴツゴツした岩道の途中にありけっこう緊張しがちなところですが、すぐ下を流れる美しい渓流と相まって、ひときわ目を惹きます。渓流を背景に映えるクルマユリを愛でることができるのです。

また、クルマユリ(車百合)の漢名の由来とされる車の輻(や)に見立てられる輪生する葉に触れながら、芳香をゆったり確認することでホッとひと息つけます。癒しスポットの一つなので、森林セラピーには重要な場所です。みなさんも約2kmの標高間で逞しく生きるクルマユリのパワーをぜひ感じていただけたらと思います!

笠ヶ岳(8月中旬)

笠ヶ岳(8月中旬)

 

山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))


 

八ヶ岳南部:標高約2,300m(8月上旬)