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2017年3月10日

[オーガニックガーデン]オーガニック野菜とおんなじ!?|エバーグリーン

土を痩せさせる無機の肥料

オーガニックガーデニングでは、無化学農薬、無化学肥料という手法を使います。みなさんが買われる、オーガニック野菜とほぼおんなじです。

それは何のためなのか。前回、簡単に触れた“元素の大循環”の中で植物を育てるためなのですね。ざっくり言ってしまうと、化学農薬に含まれる殺虫剤、殺菌剤は、植物のために働いてくれる虫や土壌生物(微生物やミミズなど)を殺してしまいます。そして化学肥料は、無機の肥料です。そのため、土に施せば、直接、植物が吸い上げることができることから即効性があり、農業現場では重宝がられてもいます。しかし反面、無機だからこそ、土壌生物の食料にはなりません。

土の中では自ずと食べ物がなくなって彼らは生きていけない=死んでしまう。それがいわゆる「土が痩せる」という現象です。土が痩せて生育が悪くなるので、化学肥料をもっとつぎ込む。土がますます痩せる……。まるで、サプリだけで健康を保とうと足掻いている人間のようではありませんか? 人間の健康も五大栄養素だけでは保てませんよね。植物の健やかさだって同じじゃないか。私はそう考えています。

良い畑はサクッとシャベルを土に挿すとミミズが

良い畑はサクッとシャベルを土に挿すとミミズが

 

植物たちのえらくて長い道のり

ここで、話はちょっと寄り道しますね。植物はどうしてそんな面倒くさいことをするのでしょう。土壌に供給される有機の元素を直接吸収すればいいのに、と思われませんか?

でもね、植物には人間などには及びもつかない生物システムとしての長い歴史があるのです。そもそも、地球がこの宇宙に生まれたのが約46億年前です。そして最初の生命が海中に生まれたのが約38億年前。その後、植物が生まれ、光合成という自立栄養手段を手に入れ、酸素を大気に供給し始めたのが、約35億年前と言われています。

それからまた長い長い時が流れ、約5億年前に植物は地上に上陸しました。ちなみにそれは、植物が30億年もの間、光合成して生んだ酸素が増えてオゾン層を作り、生き物のDNAを傷つける紫外線が減ったから。

我が家の畑で作っているオーガニック大根!

我が家の畑で作っているオーガニック大根!

 

そしてその時から植物は、今まで海中では必要がなかった根などの器官を作り出してはこの地上を生き延びてきたのです。一方、その5億年前、地上は岩石ばかりの無機物でできていたのは言うまでもありません。なんたって、枯葉などの有機物を作り出す生き物がそれまでいなかったのですからね。

植物は生きるがために、海にいた時に海水中から得ていたミネラルなどの無機の栄養素を、今度は岩石から吸い上げる生活をするようになりました。そして今も、そのシステムを営々と使い続けているわけです。

 

岩石砂漠から土の大地へ

そして今、地面には茶色い土があります。それはその後の5億年で植物たちが枯れては積もり、土壌生物がそれを分解して植物に養分を供給する。そんな大きな営みの積み重ねにほかなりません。そうして、地上の多くは石ころだらけから土の大地へと変貌したのです。そうやって土が増えた結果、地球はどうなったのでしょう。

植物は土の奥深くまで根を張らせることができるようになり、大きな樹木も生まれました。雨水を土中に長く溜められるようになり、水の循環がゆっくり穏やかになりました。

そのおかげで、植物はより多くの水を吸い上げて成長ができ、人間も他の動物も水を十分に飲めるようになったのです。私たちの暮らしや経済活動で水がこんなに使えるのは、そもそも土があるから。だから、土を痩せさせてなんていられないのです。健やかな土を、かわいいミミズを、守らないと。

畑の畔に咲きだした菜の花。もうすぐ春です。

畑の畔に咲きだした菜の花。もうすぐ春です。

ちなみに、人類の歴史はわずか600万年。現生人類に限っていえばたったの5万年ともいわれています。ガーデニングも農業の一部なのですが、その農業が化学肥料や化学農薬などで土を粗末にするようになったのは約100年前から。植物の歴史を知れば知るほど、私たちは舵を切り直さねば、と思います。

 

(オーガニックガーデナー 花房美香)


畑の畔に咲きだした菜の花。もうすぐ春です。