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2016年4月19日

インタビュー:「草木花 × おもてなし」 花と緑のおもてなしプロジェクト〜早貸秀樹さん

来たる2020年、待ちに待った東京オリンピックパラリンピックが開催されます。競技会場の多くが立地予定の臨海地域。「花と緑のおもてなしプロジェクト」と称して、世界各国のお客さまを花と緑でお出迎えします。そのために、造園・種苗・園芸関連企業団体と都民が協働して、オリンピックが行われる東京の夏に適合する花の研究し、オリンピックのときに満開となるサマーガーデン造りに取り組んでいます。

「花と緑のおもてなしプロジェクト」は、東京ビッグサイトからガンダム立像までの全長4キロの細長いシンボルプロムナード公園「夢の広場」を中心に展開しています。今回、プロジェクトを推進する東京港埠頭株式会社でおもてなしプロジェクト事務局の早貸秀樹さんに、「夢の広場」から、ダイバーシティ東京ガンダム立像前のチューリップのグラデーション花壇までを案内していただきながらお話を伺いました。

 

 

オリンピックのときに満開となる花は? どう育てる?

 

まずは、「花と緑のおもてなしプロジェクト」(以下おもてなしプロジェクト)の概要について早貸さんにご説明いただきます。

おもてなしプロジェクトに熱い想いを注ぐ早貸さん

おもてなしプロジェクトに熱い想いを注ぐ早貸さん

 

「おもてなしプロジェクトが誕生したのは今から3年前。公園に花壇を作りたいという管理者と、バイヤーが気軽に生産状況を見に来られる場所を探す花卉関連企業のニーズが一致したことを契機に、東京オリンピックに向けて、さまざまな修景をして訪れる人たちのおもてなしをしようとプロジェクトが始まりました。

 

全長4キロの細長いシンボルプロムナード公園がステージ

全長4キロの細長いシンボルプロムナード公園がステージ

オリンピック開催時には、有明テニスの森公園テニスお台場海浜公園トライアスロン潮風公園ビーチバレーの会場になります。ビッグサイトもメディアセンターになりますから、このシンプルプロムナード公園の中を通って人々は移動することになります。しかし季節は夏。炎天下、猛暑のなかで、人々の心を癒やし、おもてなしする花でこの場所をいっぱいにしたいのです。そのためにはどんな花が適していて、どんな修景をすれば皆さんが喜ぶかを、今実証実験しているところです。

おもてなしプロジェクトに3つの柱があります。1つ目は、制作展示。夏に咲くキレイな花を見ていただくためのサマーガーデンを作ります。2つ目は、イベントを開催して、たくさんの人が足を運ぶきっかけを作ること。東京オリンピックも間近だからと、昨年、一昨年と、花とスポーツを連動させたスポーツ&フラワーフェスタを開催しました。そして3つ目は、夏に強いと実証された花の情報を発信していくことです」

 

咲き誇るパンジーとビオラ

 

と、説明はこのくらいにして、まずはおもてなしガーデンのひとつ、トライアルガーデンを案内していただきます。トライアルガーデンは、夏場の過酷な生育環境に適合した苗を選定するための見本園の役割を担っています。

スタートは、ゆりかもめの青海駅と東京臨海高速鉄道りんかい線の東京テレポートのちょうど真ん中あたりの花壇。

 

 

パンジービオラが植えられています。この場所は、パレットタウンの大観覧車を背景に花が撮れる撮影スポットでもあります。

 

この看板が目印

この看板が目印

 

花と観覧車。撮影スポットです

花と観覧車。撮影スポットです

 

圧巻! 400種 5,000株のパンジーとビオラ

 

東京オリンピック開催に合わせて夏の花をメインに据えてスタートしたおもてなしプロジェクト。夏だけでなく、冬や春の花も展開しようと、今年からは四季を通じておもてなしを始めています。

ということで、トライアルガーデンは、約400種 5,000株のパンジービオラが植えられています。ここは花のバイヤーさんが訪れる見本園でもありますから、すべての花に、品目、シリーズ、色、メーカー名が記載されています。地植えのパンジーやビオラを一同にこんなに長い期間見られる場所は他にはありません。ゴールデンウィーク明けまでさまざまな品種が楽しめます。事務局からいただいた資料に、いんこ、きりん、くじら、ぱんだ、らいおんなんていう動物の名前のついたビオラを発見。もしこちらに足を運ぶようなことがあったら、ぜひ探してみてください。

まるで笑っているみたい。花にも表情があるんですね

まるで笑っているみたい。花にも表情があるんですね

紫、白、黄色、オレンジ……。色とりどりに咲き誇る

紫、白、黄色、オレンジ……。色とりどりに咲き誇る

約2,000㎡の敷地に所狭しと植えられているパンジーとビオラ

約2,000㎡の敷地に所狭しと植えられているパンジーとビオラ

このパンジーやビオラの見本園は、6月にはサマーガーデンに様変わり。ニチニチソウメランポジウムセンニチコウなど、夏の花に植え替えられます。昨年は、「おもてなしセレクション」を実施、専門家が夏の修景に有効な花を見栄えを総合的に審査しました。

最優秀賞を受賞したニチニチソウ「サンダー レッド」

最優秀賞を受賞したニチニチソウ「サンダー レッド」

最優秀賞を受賞したニチニチソウ「サンダー レッド」

最優秀賞を受賞したニチニチソウ「サンダー レッド」

 

苗から、種から、栽培方法も検証

 

たねダンゴ®という新しい方法で作った花壇を見つけました。土に種や肥料を混ぜて種を埋め込む方法です。平地ばかりでなく勾配のある場所に花を咲かせる方法としても適した方法です。子どもの頃にピカピカの泥団子を作るために友達と競ったことを思い出しました。東京オリンピック期間中に美しい花を咲かせるためには、いつ、どんな風に種を撒いたらいいのかを実証することも大切です。

たくさんのボランティアの方が童心に返ってたねを撒きました

たくさんのボランティアの方が童心に返ってたねを撒きました

たねダンゴは斜面にも適しています

たねダンゴは斜面にも適しています

トライアルガーデンの維持管理は主に事務局が担当しています。基本は、週に1度の水やりと2週間に1度の雑草取りと花がら摘み。「通常の公園花壇管理のなかでパフォーマンスを出せるということを知ってもらうことも、おもてなしプロジェクトの目的のひとつです」と早貸さんは話します。また、今年からは、オリンピックのマラソンコースの沿道などを修景することを想定したコンテナ用の花の実証実験も開始されました。

 

緑で暑さを遮る

 

おもてなしガーデンには、トライアルガーデンと並んで、修景ガーデンが展開されています。この修景ガーデンでは、夏場に開催されるオリンピックを想定して、緑で日陰を作るなど、暑熱対策を施した施設の提案をしています。

東京オリンピックのときには、会場間の移動や、パブリックビューイングの設置も想定されているシンプルプロムナード公園。設計思想より、ところによっては高い樹木がないため、日陰がほとんどありません。夏に強い植物を使って日陰を作る工夫を施した施設が設置されています。他にも、淡路瓦を使用し和の雰囲気を醸し出し提案するなど、参加団体が先駆的なデザインや技法を積極的にアピールしています。

上部や側面につる性の植物を這わせて日陰を作ります

上部や側面につる性の植物を這わせて日陰を作ります

阪神淡路大震災復興のために用いる淡路瓦。保水性に優れている

阪神淡路大震災復興のために用いる淡路瓦。保水性に優れている

また、おもてなしプロジェクトでは、四季を通じて東京の公園の魅力を発信するために、400種10万球のチューリップが楽しめるチューリップフェスティバルを開催しています。この球根は、昨年11月、近隣の企業や大学の社員と学生、一般の方のボランティアの手により植えられました。東京オリンピックに向けた地域との協働作業です。

色とりどりのチューリップが5万球

色とりどりのチューリップが5万球

向かったのは、セントラル広場の「グラデーション花壇」。ガンダム立像をバックに5万球の球根が植えられています。他にもウエスト地区、イースト地区と合わせて400品種、10万球のチューリップをゴールデンウィーク明けまで楽しめます。

ガンダムをバックに写真撮影をする人も

ガンダムをバックに写真撮影をする人も

「手前が淡い色で奥に行くほど濃い色になるよう球根をブレンドして植えましたが、黄色のチューリップが計算より早く咲きすぎました」と早貸さんは笑います。天気や気温の影響は人間の力ではどうすることもできませんものね。とはいえ、都心でこれだけの数のチューリップが見られるのはやはり圧巻です。

手前のチューリップが早く先過ぎてしまったのは計算外

手前のチューリップが早く先過ぎてしまったのは計算外

芝生地であるこの場所に球根を植えるために独自の機具を開発し、球根の大きさに穴を開けその上に砂を被せるという方法を用いています。そのため、チューリップの花の時期が終わって芝生地を開放するときも、通常のように耕耘して芝生を貼って戻さずに済むのだそうです。

満開のチューリップ

満開のチューリップ

はちみつミルク

はちみつミルク

ポップコーン

ポップコーン

レッドパワー

レッドパワー

5月21日(土)には、チューリップの球根の堀取りイベントも開催予定(詳細はおもてなしプロジェクトWeb サイト参照)。参加者は、無料で、好きなだけ、球根を持ち帰ることができるというのですから、これはもう参加しないわけにはいきませんね(笑)。

 

そして最後に早貸さんから、エバーグリーン読者の皆さんに一言。

「オリンピックを訪れる方々に『花と緑』を楽しんでいただけるように、考えられる限りのさまざまな取り組みをしているつもりです。ぜひ会場でその取り組みを見て、感じていただきたいと思います」

お話を伺った早貸さんと里見さん

お話を伺った早貸さんと里見さん

おもてなしプロジェクトでは、5月30日(月)から6月25日(土)まで、夏の花を用いたおもてなしガーデンの制作、8月6日(土)、7日(日)には、「スポーツ&フラワーフェスタ」として、スポーツイベントや花のワークショップやコンテストなどを実施予定。専門家だけでなく、広く一般の人に楽しんでもらえるように工夫を凝らしたおもてなしがたくさん用意されるそうです。詳細は、「花と緑のおもてなしプロジェクト2016」のWebサイトで更新されていきますので、ぜひチェックしてくださいね。


お話を伺った早貸さんと里見さん