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2019年6月15日

[チェルシー]チェルシーフラワーショー2019速報レポート 北海道・十勝からの初挑戦(3)|エバーグリーン

「開会前夜はガラパーティー!招待客だけの盛大な宴が開かれました」 「開会前夜はガラパーティー!招待客だけの盛大な宴が開かれました」

「開会前夜はガラパーティー!招待客だけの盛大な宴が開かれました」

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第三回「運命の最終ジャッジ!」

(第一回はこちら

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アセス(予備審査。18日朝)までの約2日間。私たちは今までにも増して全力で作業に打ち込みました。朝7時過ぎから夜は夕闇で見えなくなる21時過ぎまで。

工事のイギリス人スタッフたちは、まだ肌寒いのに石張りの園路を裸足(靴底についた土で石張りを汚すのを避けるため)になってスポンジで磨き、埃や石を切った際に出る粉塵を取り除き続けます。水路に水を流し調整します。水路両脇の石組みと植栽は、帯広から来てくれた助っ人Fさんが丁寧な職人技できっちりと仕上げていきます。

デザイナーの佐藤さんは、最後に少し残っていた前面花壇の植栽について柏倉さんと検討に次ぐ検討を重ねます。そして私たち植栽担当スタッフは、それぞれが植え込んだ植物たちの枝ぶりや花の向きを調整したり、デザイナーの二人と様々な角度から眺めては、傷んだ樹木の葉を取り除き、不要な枝を剪定するという作業を繰り返しました。

水路両脇の細かい職人技は二人の地元・帯広からの頼もしい助っ人Fさんです

水路両脇の細かい職人技は二人の地元・帯広からの頼もしい助っ人Fさんです

 

ショーガーデンならではと言えば、葉の埃や汚れを一枚一枚ダスター(ふきん)で拭き上げたり、オリーブオイルを浸した布でオオヤマザクラの赤黒い幹を磨いたりもしました。すべては、最終ジャッジのときに最高のコンディションの庭を見せるため。指示を受けて作業をしながら「ショーガーデンってこんなことまでするんだ!」と驚いたものです。

ちなみに、このオリーブオイルで磨いたオオヤマザクラの艶やかな樹皮は、会期中、何十人ものお客様に大絶賛されました。「なんて素敵な色なの!」と。そして、「これはなんという木ですか?」「イギリスでも育つ木かしら?手に入る?」と何度聞かれたことか。黙々と樹皮を磨き上げ、開会すぐに仕事のため日本に帰国されたスタッフHさんに聞かせてあげたかった。うれしい言葉でした。

オオヤマザクラの樹皮を黙々と磨くHさん

オオヤマザクラの樹皮を黙々と磨くHさん

 

アセスの18日朝は、いつ来るかわからない担当者を待ちながらギリギリまでのブラッシュアップが続きました。担当者に2分間、アピールのための英語スピーチをしなくてはならない佐藤さんにいつもの笑顔はありません。ひたすら、書き上げた英文原稿をイギリス人スタッフとともに練習していました。

イギリス人スタッフを先生に、スピーチの練習をする佐藤さん

イギリス人スタッフを先生に、スピーチの練習をする佐藤さん

 

すると不意に数名の担当者が現れて、佐藤さん、柏倉さんと話をし始めました。どうやら英語スピーチのスタートです。それが終わると、予備審査のために私たち全員その場を立ち去るように促されました。

勝手がわからない私は、彼ら担当者たちの写真をスマホで撮ってしまったのですが、「それはNG」とすぐ注意されました。アセスも、そして最終ジャッジも、誰が来るのかは秘密。そして、審査の様子も非公開です。関係者は全員現場を退去して、あとは彼らが自分たちだけで現場を見るのでした。

2分間スピーチを終えた佐藤さんは、肩の荷が下りたのでしょう。顔には笑顔が戻りました。が、その手はまだ緊張のせいか、スピーチ原稿を書いたノートを胸にしっかり抱えたままでした。そしてその日、私たちはその後も翌朝の最終ジャッジへ向けて黙々と作業を続けたのです。

英語のスピーチ原稿を手に、やっと笑顔の佐藤さん

英語のスピーチ原稿を手に、やっと笑顔の佐藤さん

 

その日の午後のことです。見知らぬ男性がやってきて、我が工事チームの監督タツさんとイギリス人スタッフたちと石壁のあたりで何やら話し合っていました。後で聞いたところ、その方は別の庭のデザイナーさんだったそうです。その方が「漢方の庭」の石壁にある二つの滝口をみて、「滝口の裏にシリコンを塗ると水離れがよくなるよ」とアドバイスしてくれたとのことでした。「ライバルかもしれないのになんて親切な!」と思ったら、経緯はこうでした。

私たちが思いがけず早く植栽作業が終わったので、バックヤードに積んであったコンポスト(苗にかぶせる土)はもう用済み確定でした。その余っていた土、「うちは足りないので少し都合してもらえないか?」と彼から相談があったそうなのです。それをOKしたお礼に、彼は貴重なアドバイスをしに来てくれたのだとか。

確かに、それまでは滝口から出た水の一部がすぐ後ろの壁を伝ってちょろちょろと流れ落ちていましたが、そのアドバイス後、水はすべて勢いよく前に飛び出すようになりました。ともすればガーデン同士は競争相手と思い込んでいましたが、こんな温かな助け合いもあるとは。最終ジャッジを翌朝に控え、みんな少し緊張していたなかでのほっこりした出来事でした。こんな小さな出来事もあって、「漢方の庭」の完成度はより上がっていったのです。

滝口裏にシリコンを塗った後。水は全く壁に伝わらなくなりました

滝口裏にシリコンを塗った後。水は全く壁に伝わらなくなりました

最後、パーゴラの下に入ったテーブルセット。南部鉄瓶や湯のみなどのセッティングは佐藤さんが

最後、パーゴラの下に入ったテーブルセット。南部鉄瓶や湯のみなどのセッティングは佐藤さんが

庭と歩道の間にはロープが張られ、足元には芝も。それらを傷めないように、腹ばいで植物の調整をする柏倉さん

庭と歩道の間にはロープが張られ、足元には芝も。それらを傷めないように、腹ばいで植物の調整をする柏倉さん

 

そして運命の翌朝9時過ぎ。

ジャッジたちがもうすぐやってくるという瞬間まで佐藤さんと柏倉さんは調整を指示していました。「え? もう来るのにまだ手を加えるの?」と小心者の私などは正直ビビったくらいです。より完璧を目指す強い意思、より美しい庭への執念とでもいうのでしょうか。初参加とはとても思えないほど落ち着いていた二人でした。

そんななか、予定時刻より少し遅れて現れた最終ジャッジの一群。「こんなに大勢が審査なさるの?」とびっくりするほどの人数でした。そして前日のアセス同様、二人と私たちスタッフはすぐその場を離れ、会場内にある関係者用カフェへと遅い朝食を食べに向かいました。「あー、終わった、終わった。もうやれることはみんなやったよね」口にこそ出しませんでしたが、それぞれの顔には安堵の表情が浮かんでいたように見えました。カフェで頼んだイングリッシュブレックファストのセット。私ごとですが、ほんと美味しかった!

これで15ポンドほど。伝統の豆のトマト煮込みがくせになるおいしさ(笑)

これで15ポンドほど。伝統の豆のトマト煮込みがくせになるおいしさ(笑)

 

そして、プレスデーを一日挟んで開会初日。21日の朝が来ました。(続く)

今日の二人。かっこいい看板も設置されてうれしい!のポーズ

今日の二人。かっこいい看板も設置されてうれしい!のポーズ

 

(オーガニックガーデナー 花房美香:「漢方の庭」チーム 植栽スタッフ)


庭と歩道の間にはロープが張られ、足元には芝も。それらを傷めないように、腹ばいで植物の調整をする柏倉さん