植物Q&A
コボウズオトギリについて混乱していますのでおたずねします。
投稿写真は以前コボウズオトギリと回答いただいた植物です。最近投稿されたもの(下記)にはこれと似たものあまり似てないものがありますが、いずれもコボウズオトギリとは異なるという見解があります。
https://love-evergreen.com/qa/topic/15584
https://love-evergreen.com/post/2354
https://love-evergreen.com/qa/topic/15508
全て解決済みになってしまっていますので改めてまとめて質問させていただきました。よろしくお願いいたします。
![](/static/img/icon_comment2.png)
Oohasiさん、いつもお世話になります(^^;
Mizutaniさん、「ヒペリカム」なら間違いなしですね!
飯島さん、コボウズオトギリは(私が)思っていたより花が小さいようなんです。2cmくらいらしいです。飯島さんの写真はコボウズオトギリっぽく見えます。
おまたせしました。
相変わらず文章が長いです。
まず、日本に流通していて実も鑑賞するものは
・コボウズオトギリ(Hypericum androsaemum)の園芸品種
・Hypericum ×inodorum(コボウズオトギリ×Hypericum hircinumの自然交雑とされる)の園芸品種
・属の直下に置かれる園芸品種(交配が明らかにされていないものを含む)
の3つがあります。
ほかにアメリカオトギリ(Hypericum frondosum)の園芸品種も出回っているとされますが、特徴が異なるので上記3つのいずれかの品種が混同されてこの名で出回っていると考えられます。
属の直下に置かれる園芸品種はともかくとして
コボウズオトギリとHypericum ×inodorumの区別についてはRHS Dictionary of Gardeningやhttp://www.missouribotanicalgarden.org/などを参照しますと
・草丈はコボウズオトギリが60~90cm、Hypericum ×inodorumが90~1.5m
・葉の長さがコボウズオトギリが長さ4-15cm(10cmまでとする文献もあり)、Hypericum ×inodorumは長さ3.5-11cm(5cmまでとする文献もあり)とHypericum ×inodorumのほうがやや小さいです。
・葉の基部はコボウズオトギリが切形-心形、Hypericum ×inodorumがまるい-心形
・花数はコボウズオトギリが約1-11個、Hypericum ×inodorumが約1-23個
・花径はコボウズオトギリが径2cm、Hypericum ×inodorumが径2.5-3cm
・果実の色はコボウズオトギリが赤→黒(しばしば赤褐色を保つ)、Hypericum ×inodorumがコーラルピンク-鮮赤色
とありますが、園芸品種により草性や果実の色は異なる(cultivars have been produced which primarily differ from each other in plant habit and berry color.)とあります。下記の写真が一覧できるサイトからも実の色や数、形、枝ぶりなど結構バラバラですね。
https://group.flowers/en/hypericum/
https://astraflowers.com/en/hypericum/ (inodorumはpage-7からです)
RHSにはコボウスオトギリの園芸品種に「not black」と書いてあるものもあるので黒ければコボウスオトギリですが、黒くないからコボウスオトギリではないとは言えないです。
葉の大きさについては、コボウズオトギリの葉はMAX値までいけばオトギリソウ属中最大の葉をもつ部類ですが、最小値が4であることや10まで(ビヨウヤナギのMAX値くらい)とする文献もあることから、大きさは参考程度にしたほうがよいと思います。品種や栽培環境でも異なりますし。
では、上記2種の明瞭な区別点はあるかというと
・コボウズオトギリは花弁が萼と同長もしくは短い、雄しべが花弁の0.9-1倍長、萼は花期は開出して果実期に反曲する
・Hypericum ×inodorumは花弁が萼や花柱(style)より著しく長い、雄しべが花弁の1.2-1.3倍長、萼は花期・果実期とも反曲する(とありますが、しない場合も多々あるようです)
とあるので、この点で区別ができそうです。
上記をもとにコボウズオトギリかHypericum ×inodorumの2択とするなら
さとうみさんのほうはHypericum ×inodorum、飯島さんの写真はコボウズオトギリです。
https://love-evergreen.com/post/2354
https://love-evergreen.com/qa/topic/15584
の2つはHypericum ×inodorum
https://love-evergreen.com/qa/topic/15508
は果実なので微妙ですが、葉の基部が切形のものもあるのでコボウズオトギリの可能性が高いですね。
Hypericum ×inodorumは片親がコボウズオトギリでそちらの血が強く出るとかなりコボウズオトギリ似の品種になります。
また、ややこしいことに最初コボウズオトギリの園芸品種として出回っていたのにあとからHypericum ×inodorumに変更されていたりします。今回の件で調べていて発見しました(^^; このあたりは販売戦略というかいろいろあるので…
ヒペリカムに限らず高度に交配の進んでいるグループは、品種名がはっきりしているものは発表元の情報を信じる、それ以外は記載をもとに総合的に判断するしかない、という形ですね。
コボウズオトギリの図鑑にHypericum ×inodorumが紐づいているのもありそうなので修正しておきます。また、図鑑文章も書き加えておきますね。
rosapersica先生、この度もお世話になりました。ありがとうございます(^^)
EG植物図鑑、頼りにさせていただいてるのでさらなる充実を期待しております!