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2023年7月24日

[イベント]イベントレポート:令和5年度園芸文化賞、受賞者決まる!!|エバーグリーン

園芸界にも賞があるんです。昨年もご紹介した園芸文化賞授賞式に今年も潜入。ということで、受賞者の方々を紹介したいと思います。開催場所は昨年同様、都内上野にある東天紅上野店ルナホールでした。

 

おさらい。園芸文化賞ってなに?

園芸文化賞・園芸文化特別賞は、園芸文化の発展向上に貢献された個人や団体の功績を讃えるとともに、永く伝えていくことを目的に、1977(昭和52)年に創設された公益社団法人園芸文化協会から贈られる賞のことです。受賞の条件は紙面の関係上割愛させていただきますが、植物(農作物含む)、園芸、自然環境保護等に貢献、寄与した人、団体に贈られます。そして、今年の受賞者は神谷重明(かみやしげあき)氏、坂嵜潮(さかざきうしお)氏のおふたりでした。

受賞式の様子

受賞式の様子

受賞者の坂嵜潮氏への記念品

受賞者の坂嵜潮氏への記念品

 

受賞者おふたりの記念講演もありました。

おひとりめは、菊師・菊培養師の神谷重明氏。菊人形づくりの伝統を受け継ぎ、七十年以上にわたり国内外で菊人形や花人形の作成、展示、指導を実践された方です。また、菊人形用の培養師が不足するなか、自ら菊人形向きの品種の育種、栽培、保存にも尽力されてきました。

現在は一線を退いたものの、積極的に菊師、菊培養師の技術の継承と後継者の育成をされ「2019北京世界園芸博覧会」では、氏の指導により制作された作品が最優秀作品賞を受賞といったすばらしい経歴があります。神谷氏の講演を聞いて、今ではあまり目のすることも少なくなった菊人形ですが、その昔は菊のシーズンになると菊人形を見に行くというほど日本の生活になじんでいたことがわかりました。筆者も子ども時代に家族でひらかたパークの菊人形を見に行ったことを思い出しました。

ちなみに菊人形とは衣装部分に切り花は使用せず、すべて根付きのキクを使用して作られる等身大の人形のことで、そのルーツは江戸時代に植木屋が始めた菊細工だとされています。当初は人形ではなく、帆掛け船や鶴などが作られ、さらに巣鴨の植木職たちのあいだに菊細工が流行し、本郷団子坂(だんござか)では、菊人形の見世物が催されると全国で菊人形興行が行われ、日本の秋の風物詩として親しまれるようになったとされています。

そんな菊人形、神谷氏のお話によると、一体に使われるキクの数が300束ほどになり、キクの根は上向きに素早く人形の骨組みにつけていくことが大切とのこと。さらに、菊人形でいちばん難しい工程は胴殻作りで、この出来映えしだいで人形の形が大きく変わってくるのだとか。会場内で紹介された神谷氏の菊人形はいずれも素晴らしく、あらためてこの秋は菊人形を見に行きたくなってしまいました。

受賞後のスピーチをする神谷氏

受賞後のスピーチをする神谷氏

 

神谷氏が菊人形づくりを始めたきっかけは、父親が菊師(菊人形をつくる職人)の親方だったこと。16歳(昭和26年)から今日まで続けられています。

菊人形(注:写真は神谷氏の作品ではありません)

菊人形(注:写真は神谷氏の作品ではありません)

 

 

おふたりめは、坂嵜潮氏

坂嵜潮氏は育種家・有限会社フローラトゥエンティワン代表取締役です。企業在職中はペチュニアの野生種を活用した匍匐(ほふく)性の品種「サフィニア」の開発に携わり、独立後個人育種家として活躍されています。しかし、坂嵜氏が育種家になったのは、社命でブラジルにワイン現地生産の可能性を調査がキッカケ。その調査で野生種の種子を持ち帰ったことで、今では誰もが知るあの「サフィニア」の誕生につながったのだとか。

ちなみに、このサフィニアの名は、surf(サーフ・寄せる波)にペチュニアの語尾をつけた造語で、波うつように花が咲くことに由来し、従来のペチュニアと区別して欲しいといった思いが込められているからなのだそうです。坂嵜氏の近年作出はアジサイ。なかでも「ラグランジア ブライダルシャワー」は世界中の名だたる賞を受賞し、アジサイの新しいジャンルを確立したとされています。記念講演では、坂嵜氏の育種の秘密や秘話も交えての楽しいお話を聞くことができました。
(参考サイト:https://www.jataff.or.jp/senjin3/28.html

会場に飾られていた坂嵜氏作の「ラグランジア ブライダルシャワー」(白)

会場に飾られていた坂嵜氏作の「ラグランジア ブライダルシャワー」(白)

今秋発売予定の「ラグランジア クリスタルヴェール2」(紫)

今秋発売予定の「ラグランジア クリスタルヴェール2」(紫)

受賞者の坂嵜氏

受賞者の坂嵜氏

 

来年はどんな方との出会いがあるのか今から楽しみ!

園芸文化賞。来年はどんな方が受賞するのか今から楽しみです。ちなみに、公益社団法人園芸文化協会は、1944(昭和19)年に「園芸による文化の向上」を図ることを目的に設立された公益法人。各団体や賛助企業、自治体等とも連携ししながら園芸に関する様々なイベントや活動が行っている団体です。

 

(藤依里子 園芸文化協会会員/グリーンアドバイザー)


受賞式の様子