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2016年8月8日

ジューシーで、とびきりにおいしい桃を作る人 〜 山梨市萩原フルーツ農園

森林セラピーの体験取材で訪れた山梨市。「山梨市って桃の産地として有名じゃなかったっけ?」と、ふと頭をよぎりました。「せっかくだからおいしい桃をおみやげに買って帰りたいんですけど……」と、山梨市観光協会の神津宜久さんに、「オススメの桃農家を教えてください」とお願いしたところ、車で連れて行ってくれたのが、萩原フルーツ農園。甲府盆地の南側の斜面にあります。案内してくれたのは、若き農業家萩原貴司さん。おいしい果物をたくさんの人に届けたいと、寝る間を惜しんで、桃やぶどうの栽培に取り組んでいます。

桃畑からは甲府盆地と富士山を眺めることができます

桃畑からは甲府盆地と富士山を眺めることができます

 

1品種の桃が収穫できるのはわずか5日から1週間

この萩原フルーツ農園は、さくらんぼや桃、ぶどうを生産する傍ら、一般のかたにもおいしくて新鮮な果物を味わってほしいと、春から秋の初めにかけて、さくらんぼ狩り、桃狩り、ぶどう狩りを提供しています。7月初めから8月のお盆の頃までは、桃の収穫の最盛期。桃農家にとっては1年で一番忙しい季節を迎えています。

お話を伺った萩原貴司さん。萩原フルーツ農園の頼もしい3代目です

お話を伺った萩原貴司さん。萩原フルーツ農園の頼もしい3代目です

桃狩りができる桃畑には、白鳳系、白桃系の品種がそれぞれ6、7種類、およそ60本の桃の木が植えられています。若木なら、1本に2、300、成長した木ならそれ以上の実がなるといいます。とはいえ、1品種の木から桃が収穫できる期間は、5日から1週間という本当に短い期間。私がお邪魔した7月初めは、白桃系の「加納岩」という品種がまさに旬。たわわに実を付けていました。その後、早生白鳳、本白鳳、なつっこと品種が変わっていきます。

まさに最盛期を迎える白桃系の「加納岩」

まさに最盛期を迎える白桃系の「加納岩」

と、簡単にお話ししてきましたが、実は、萩原さん、ゴールデンウイークあたりから、1日も休んでいないとのこと。桃の栽培はそのくらい手がかかるということなのです。

 

手間ひまをかけるからこそおいしい桃に育つ

4月初旬。おいしい実を実らせるために、実がなる場所や栄養を考えながら、上向きや枝の基、先端の花を摘んでしまいます。ツボミのうちに摘むことを摘蕾(てきらい)、花を摘むことを摘花(てきか)といいます。そして、この後の受粉作業のために、摘んだ花は捨てずに機械にかけて花粉を集めます。「本来であれば、花粉を持っていない桃の子孫は残らないはずですが、いろいろな流れのなかで品種改良を重ね、人間が受粉に手を貸してきたわけです。それらの品種には、摘花で集めた花粉を人間の手で受粉させるのです」と萩原さん。

二重に袋をかけた状態の桃

二重に袋をかけた状態の桃

そして、実が付いたら、雨や虫、そして強い日差しを除けるために、二重に袋をかけます。そうはいっても、日が当たらないとキレイなピンクや赤い桃にならないので、実にうっすら黄色がかった色が入ったタイミングで外側の袋を取るといいます。

外側の袋を外しました

外側の袋を外しました

太陽の反射で枝の基にも光が届くように木の下に白いシートを敷いています

太陽の反射で枝の基にも光が届くように木の下に白いシートを敷いています

デリケートな桃は、強い風が吹くと、成熟する前に落果してしまうことがあります。少しでも被害を防ぐため、桃農家は常に強風や台風の情報に注意しているそうです。

そして、収穫。出荷してお客さまの手に渡ったときが食べ頃になるように、少し固めの桃を選んで収穫するそうです。

「以前、出荷した翌日に届いた桃を食べたお客さまから、『桃ってこんなに硬かったけ?』とクレームをいただいたことがあります。柔らかめの桃が好きなかたは、少し時間を置いておいてから召し上がっていただく方がいいですね」と萩原さんは話します。しかし、一番おいしい桃は、木になっている状態で完熟した桃。それを味わうために、毎年、桃狩りにいらっしゃるリピーターさんも多いそうです。

萩原さんが選んでくれた桃。太陽の日差しをいっぱいに浴びた高い枝の先端にあります

萩原さんが選んでくれた桃。太陽の日差しをいっぱいに浴びた高い枝の先端にあります

しかし、最近の温暖化や異常気象は、おいしい桃を作りたいと願う萩原さんの悩みの種です。「ジューシーでおいしい桃を作るには、水は必要不可欠です。雨が多いと、玉は張りますが、糖度の薄い水っぽい桃になりやすくなります。一方で晴れて日差しが強いと、糖度の高い濃縮された旨味の桃ができることが多いですが、玉が小さかったり、過熟になったりします。要はバランスなんですね。この数年は、雨が多過ぎたり、日差しが強過ぎたりして、格割れや変型を起こしています。また、昼夜の温度差が少ないため、キレイな色が入らないという傾向もあります」。そんな問題を解決すべく、大学、大学院と、化学を専攻していた萩原さんは、BM技術を駆使して、最先端の果物作りに挑戦しています。

 

専門家に聞く「おいしい桃の選び方」

最後に、萩原さんに、桃生産者の立場から、エバーグリーン読者の皆さまのために、おいしい桃の選び方を教えていただきました。

「ある程度、大きく張った桃がジューシーです。水が隅々まで行き渡っている分、栄養も運ばれていますからね。品種にもよりますが、色でいえば赤さもポイントですが、赤くなっている以外の部分の地色が抜けているかどうかもよく見てください。緑色っぽいとまだ少し若い状態ですから、少し黄みがかってきたくらいがちょうどいいかもしれません。桃狩りにいらしたときに食べるなら、太陽がよく当たっている枝の先端になっている桃を選んでくださいね。でも、色や形が悪くてもおいしい場合もありますし、硬さも、甘さも好みがありますから、一言でおいしい桃を定義するのは難しいですね」

「お嫁に来るまでは桃やぶどうとは無縁の生活をしていました」と奥さまの恵子さんは笑います

「お嫁に来るまでは桃やぶどうとは無縁の生活をしていました」と奥さまの恵子さんは笑います

萩原フルーツ農園で桃狩りを楽しめるのは、8月のお盆の頃まで。それと前後してぶどう狩り、収穫の季節が訪れます。お邪魔した桃畑の隣にあるぶどう畑では、皮ごと食べられるシャインマスカットの実が大きくなり始めていました。

そろそろぶどうの季節です

そろそろぶどうの季節です

 

<取材協力>

萩原フルーツ農園:http://hagifruits.net/index.html

山梨市観光協会:http://www.yamanashishi-kankou.com

 

(エバーグリーン編集部 たなかみえ)